薬剤の「安全性」と「効果」

飲食店での害虫駆除において薬剤を選ぶ際は、「安全性」と「効果」のバランスを重視することが極めて重要です。特に食品を扱う環境では、食品への汚染リスクを最小限に抑える配慮が必要です。

主な薬剤の選び方と使用方法のポイントを以下にまとめます。

 

1. 薬剤のタイプと優先順位

 

飲食店では、食品への影響が少ない薬剤から優先的に選択するのが基本です。

 

優先度【高】ベイト剤(毒餌剤)

 

ゴキブリ駆除の主流であり、最も推奨される方法です。

  • 特徴: 薬剤をジェル状や団子状にして、ゴキブリの潜伏箇所や通路に設置します。ゴキブリが毒餌を食べ、巣に戻って排泄物などを介して他の個体にも効果が広がる連鎖駆除効果が期待できます。
  • メリット:
    • 安全性が高い: 食品や食器に触れる場所に直接散布しないため、汚染リスクが低い。
    • 即効性と持続性: プロが使用する業務用は、高い駆除効果と長期間の残効性があります。
    • 営業時間中の施工も可能な場合が多い(噴霧と異なり煙や臭いがないため)。
  • 選び方:
    • 有効成分にはフィプロニル系ヒドラメチルノン系などがあり、ゴキブリが特定の成分に慣れてしまう(抵抗性を持つ)のを防ぐため、成分をローテーションして使用することがプロの現場では推奨されています。

 

優先度【中】残効性のある液体殺虫剤(水性乳剤など)

 

ゴキブリの潜伏場所や侵入経路に散布し、殺虫成分を残留させて駆除する方法です。

  • 特徴: 厨房機器の裏や隙間、排水周り、建物の外周など、食品に直接触れない場所に使用します。
  • 注意点: 食品や食器に付着しないよう、散布時は必ず養生し、営業終了後に行うなど、安全管理を徹底する必要があります。残留成分が多すぎると、HACCPなどの衛生管理基準に抵触するリスクがあるため、使用場所や量には十分な配慮が必要です。

 

優先度【低】くん煙剤(バルサンなど)やエアゾール剤(スプレー)

 

即効性はありますが、食品汚染のリスクや営業への影響が大きいため、緊急時や店舗閉鎖時などに限られます。

  • 特徴: 煙や霧状の殺虫成分を広範囲に拡散させ、隠れた害虫も駆除します。
  • 注意点: 使用前には、全ての食品、食器、調理器具を完全に包むか、別室に移動させる必要があります。また、火気のある場所での使用は引火・爆発の危険があるため、特に厨房での取り扱いに注意が必要です。

 

2. 薬剤の安全性に関する考慮事項

 

飲食店では、食品衛生法やHACCP(ハサップ)の考え方に基づき、安全性が最優先されます。

  • 食品への汚染防止: 薬剤を使用する際は、「食品を汚染しないようその取扱いに十分注意すること」が食品衛生法などのガイドラインで定められています。
  • 天然由来の忌避剤: 殺虫成分ではなく、よもぎやどくだみなどの天然植物エキスを主原料とし、虫を寄せ付けない忌避剤も、安全性が極めて高い対策として注目されています。

 

3. 根本的な対策の重要性

 

薬剤はあくまで「駆除」の手段であり、「予防」にはなりません。最も重要なのは、害虫が発生しにくい環境を作ること(防除(Pest Control))です。

  • 環境改善:
    • 清掃を徹底し、餌となる食べ残しや生ゴミ、油汚れを排除する。
    • 侵入経路(配管の隙間、窓、ドアなど)を塞ぐ。
    • 水回りの水滴をなくし、水分補給源を断つ。
  • 専門業者への相談:
    • HACCP対応行政登録を受けている専門の駆除業者に依頼することで、虫の種類を正確に特定し、その生態に合った薬剤を、食品汚染のリスクを最小限に抑えつつ適切に使用してもらえます。
    • 業者は、薬剤のローテーション管理や、環境改善のアドバイスも提供してくれます。
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